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こんにちは。

苔テラリウム作家として「あまの苔屋さん」=AmaZin’Greenという屋号で活動している髙岡忠宏です。

2018年、仕事の帰り道にふと立ち寄ったお店で出会ったひとつの苔テラリウム。

その小さなガラスの世界を覗き込んだ瞬間、子どもの頃に沖縄の森で感じたあのワクワク――植物の匂い、湿った空気、光の揺らぎ――が一気に蘇りました。

忙しさを理由に、どこか置き去りにしてきた感情や好奇心を、苔は静かに呼び戻してくれたのです。

そこから私の“苔の旅”が始まりました。

↑Feel The Garden 川本毅さん作


■ 苔は、静かに、しかし確かに「人の心に触れる」

苔を眺めていると、時間がゆっくりと流れはじめます。

大きく成長するわけでも、派手な花を咲かせるわけでもありません。

けれど、光と水の量、置く場所、湿度のわずかな違いで、苔は全く違う姿を見せてくれる。

その変化はとても静かで、けれど確かで、まるで私たち自身の心のようです。

「今日は少し元気だな」

「なんだか乾いているな」

「光が足りないのかもしれない」

苔と向き合う時間は、自分の内側と向き合う時間にもなります。

そんな苔をガラスの中で育てる“苔テラリウム”は、

私にとって「毎日の中に小さな森を置く」営みです。

ここから誰かの暮らしにも、小さな余白と深呼吸が生まれてほしい。

その思いで作品を作っています。


■ 苔リトリートという体験

苔をもっと深く感じたい。

そう思い立ち、兵庫で苔散策をしているツアーを探していたところ、ちいさな苔屋さんがやっている〈兵庫五国苔リトリートツアー〉をネットでみつけました。

ただ見るのではなく、自然の中で“時間ごと”味わってほしい。

という苔伝道師 増田真人さん(現兵庫テラリウム協会会長)の想いから生まれたのが 「苔リトリートツアー」 です。

リトリートと聞くと特別な体験のように聞こえるかもしれませんが、「自然の中で、五感をひらくとても豊かな時間」で、まさにAwe体験でした。

森に入り、湿った空気に触れ、足元の小さな苔を肉眼やルーペで覗く。

遠くの滝の音や、雨粒の匂いを感じながら、日常では気づけない“微細な世界”に耳を澄ませる。

そうすると不思議と、自分の呼吸もゆっくりになり、心がふっと軽くなる瞬間が訪れます。

苔リトリートツアーは、

「自然と自分を取り戻すためのスイッチ」

だと私は考えています。

この体験こそが、私を、苔の世界に本格的に誘った体験でした。


■ 作品づくりという、もう一つのリトリート

テラリウム制作もまた、リトリートそのものです。

ガラス器の形に合わせて湿度を設計し、苔の種類に合わせて光の角度を調整し、石や流木で小さな地形をつくる。

ひとつひとつの工程に迷いと発見があって、その過程を共有することも私の楽しみです。

その制作の裏側をオンラインで公開する場として

DispWealにもアトリエを開きました。

ここでは「創作の呼吸」を感じてもらえるような場所にしていきたいと思っています。

■ 未来に向けて ― 苔の扉がひらくとき

苔テラリウムは、一見するとただの“癒しのインテリア”かもしれません。

けれど私はそこに、もっと深い可能性を見ています。

自然の時間を思い出すこと。

感情の揺らぎを大切にすること。

小さな変化を喜ぶこと。

現代の暮らしの中で忘れがちなものを、苔はそっと手渡してくれます。

アートやアップサイクルとの組み合わせ、食・美容・未来の素材としての苔の可能性。

そして人の心を整える“自然の処方箋”としての苔文化。

苔を通して、

もっと多くの人が自分自身の「扉」を開けるきっかけをつくりたい。

そんな想いで、これからも創作と発信を続けていきたいと思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

ここからまた、新しい苔の物語が始まります。

あなたの暮らしにも、小さな緑の扉が開きますように。


コメント(1件)

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DispWeal運営さん

4日前

制作を通して自分の内面と向き合うという表現が、とても心に残りました。
アトリエでの制作過程の共有も楽しみにしています。
これからの発信も応援しています。

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